愛犬と散歩をしていたときに出逢った小学生の男のお話。
「犬を飼っていらっしゃるんですか?」
と堂々とした大きな声で話しかけてきました。丁寧な言葉と幼さとのギャップが可愛らしく、思わず話し込んでしまいました。
今は飼えないけど犬が大好きなので大人になって自分でお金を稼いだら飼いたいと。
「お給料を30万貰えたら犬って飼えますか?」
と、何やら具体的であるけど生々しい質問から始まって
会社員になると必ず出世って出来るんですか
社長って何をするんですか
お給料はらう側ではなくて、もらう側のギリギリ一番上まで行って会社を辞めて他の会社でまた同じ立場になるって繰り返すことは出来ますか
聞けば小学校4年生。そんな質問に丁寧に優しく答える主人にも
「そうなんですね!とても勉強になりました」
と、受け答えがしっかりしている。
綺麗に刈られた頭髪。今どきの子供のふくよかな体格、肌も綺麗で艶があり、歯も白くきれいに生えてる。この時期に短パン半袖はワンパク小僧には珍しくない。何より小学校4年生の男児にしては語彙力があり、きっと沢山の会話の中で自発的に学びながら暮らしているのだろう。
しかし、何か気になり
「こんな話をちゃんと聞いているあなたがとても偉いわね」
と言ったら
「僕は生きていく力がなくて、生きていく方法が分からないんです」
という。
「僕はあと5年したら家族と離れないといけないんです」
どういうことかと聞けば
「僕は中学を卒業したら家を出て、働いて、そこから生活費と学費を出して残りは家族に渡すんです」
なんとなく積み重なっていた違和感が芽を出した。そして聞いてみた。
「それは誰が決めたの?」
「お母さんです」
「そうなんだね。それじゃ、あなたは本当はどうしたいのかな?」
と聞くと
「・・・わかりません」
「そうか。自分は本当はどうしたいのかを考えてもいいんだよ」
というと真っ直ぐ見つめる目が、少し開きました。
「お母さんのおっしゃることも一つの道。今わからなくても、自分は本当はどうしたいのかなって考えるのも、生きる力となると思うよ」
すると、唐突に
「そうなんですね!勉強になりました。お腹がすいたので僕は帰ります」
といって走って帰っていきました。
言葉にならないところで伝わってくる。
彼は気が付いた。いや気が付いていた。
でもまだお母さんの為に生きていきたい、そうしていかなくちゃいけないんだって、少し深いところで想っていること。
心の中の葛藤、その居心地の悪さ。
もう少し、話したかった。
犬とほんの少しボール遊びをしたときの、
「すっごい楽しい!」とはじけた笑顔が彼の永遠になって欲しい。
彼が今、何を選択したとしても、いつか自分のしたいことを叶えていけるだろう。
そのときまで、この出会いが心のどこかに小さなささくれみたいに残っていてくれたらと願うばかり。
子どもは未来です。可能性を沢山秘めている。子供は誰かの所有物ではありません。親であっても。
無限の可能性の中から自ら選び、責任をもって人生を歩む自由を持てるまで、子どもは社会が守り育てるもの。そうあり続けたい。
今日も読んでくださってありがとうございます。
愛と感謝を込めて