夏の音。深夜まで尽きることなく続く蝉の声。
あれは海と似ている。その音にひたっていると、自分の存在をすっかり忘れてしまう。
ヘルマン・ヘッセ 「人生の言葉」からの抜粋
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蝉しぐれ。街中では夏でもあまり聞かなくなりましたね。
確かに寄せては返す波のようでした。
日本人は、聞く、見ることでも涼をとるように、五感で季節を愛でる繊細な感性を日常で育て、厳しい自然の中で生きることに愉しみを見出してきました。
虫の鳴き声を『声』として聴くのは日本を含めてアジアのわずかな民族のようで、多くは雑音として脳内で処理されるため、近くで鳴いていてもその音は淘汰され、聞こえないそうです。
繊細さはときに弱さとなりますが、自分以外のものに身を委ね、一体感を感じ、そのものを愛する感性は、人として、生きるものとして美しいと私は思います。
美しいものを守りたい、永らえさせたいと思うのが、人に備わった本能だとも思います。
心、体、なんとなく弱っているなあ、と感じるとき、誰でもあります。
そんなとき私は、近くの砂浜を散歩し、波の音、広がる海と空の景色、砂の感触を楽しみます。
また、公園でお気に入りの木に寄り添って、枝葉のしなりに気持ちを沿わせ、木漏れ日を浴びて、木の脈拍と自分を合わせるように呼吸してみたりと、自分の感覚で意識の広がりを楽しんでいます。
それが出来ないときでも、その感覚を思い出し、自分をリラックスさせています。
これは私なりの安心。私の好きなこと。
あなたの安心は何ですか。
人は誰でも時には弱ります。その時、すぐさまご自身を助けられるように、あなたの安心を見つけて、今からご自身を喜ばせて差し上げてください。
ご自分を愛して差し上げて下さい。
私たちは生きているだけで美しいのです。
ルーム・ソル 小坂田 恵理